「最低限文化的な作曲スキル」が身に付く教則本「思いどおりに作曲ができる本」【おすすめレビュー】

 

とりあえず1曲通して作れるようになりたい。

もしあなたがそう考えているなら、まずは自分の中に「最低限文化的な作曲スキル」というフォーマットを持つ必要があります。

1つの曲が完成するまでに必要な要素を知識として理解し、(結果の良し悪しは別として)とりあえず最初から最後まで作れるようになる。それが「最低限文化的な作曲スキル」です。

 

通常、これを持つには結構な量の書籍に当たる必要があります。

音楽理論やアレンジ作法に関する専門書を何冊も嗚咽しながら噛み砕き、少しずつ自分の中にスキルとして形成してゆくのが普通です。

 

しかし世の中には、1冊で「最低限文化的な作曲スキル」をインストールできる教則本が存在していたりもするのです。もはやスキルそのものが売ってる状態だと言えます。

今回ご紹介する「思いどおりに作曲ができる本」もその類の教則本です。

今回はこれに8年お世話になり続けている僕が、その魅力を伝えたいがために書く記事でもあります。

 

「思いどおりに作曲ができる本」概要

この本の全体は、次の五章からなります。

第1章…超基礎的な音楽知識

第2章…作曲のやり方

第3章…アレンジノウハウ

第4章…演奏技術

第5章…コード進行集、資料集

ざっくり言って前半が作曲、後半が編曲のノウハウとしてまとまっています。

 

本文は「作編曲に関する疑問、悩み⇒それを解消する知識やハウツー」という構成です。見開き2ページにつき1つの話題が載っている形ですね。

長文になりやすい解説書などに比べ、目的の項目だけをパラパラと探しやすい造りになっています。

 

そして各ページには「そのページのノウハウを実践するとどういう効果が得られるのか?」を実践した音源が付いています。

巻末の2枚のCDがソレです。この音源が何故か無駄にカッコいいので聴いてていつも笑ってしまいますが、やはり参考になります。

 

発行こそ2010年の本ですが、2018年の今見ても本当に遜色ない内容で驚きます。奥付の作者も実年齢の半分くらいに見えるしなんか怖いですね。

作曲に必要な道具が揃う「総合音源のような書籍」

この本のいいところは「説明しすぎない」ところにあります。

カバーしている範囲自体はかなり幅広く、コードって何?からジャズの演奏方法まで扱っているほど。

しかしそれらの要素の必要な部分だけを的確に抽出してまとめているため、手軽に読むことができ、それでいてちゃんと効果があります。不必要に深入りしていかないのです。

例えば、「ストリングスの上手な入れ方を教えて!」のページでは

ロックやポップスなどでストリングス・アレンジを行う時には、2つポイントを押さえるだけで大丈夫です。

~中略~

1.”ウォーリーを探せ”理論
コードとコードの共通音(=ウォーリー)を探します。 ~~ この共通音は”ペダル・ポイント”ともいい、よく探せば、大抵どんなコード進行にも見つけることができます。もちろん止まっているのが退屈だったり、コード進行上無理がある場合は、動かしてもOKですよ。

2.”ボケと突っ込み”理論
~~ 漫才のボケと突っ込みは、会話の究極型ともいえますが、実はストリングスのアレンジも、この漫才と同じ発想でできてしまうのです。 ~~ なお、このようにメイン・メロディの間に入れるフレーズをカウンター・フレーズといいます。

対位法とか和声とか出しません。先にわかりやすい考え方を示し、その後で「実は一般的には〇〇という名前で呼ばれるよ」とフォローを入れる形。美しいやり方です。

 

初心者に本当に必要なのは、こういった幅広い要素をかいつまんで教えてくれる「総合音源のような書籍」です。

それで得たベースの知識を発展させたくなった時、初めて「専門書」の力を借りるのが王道ですね。

何はともあれとりあえず1曲作れるようになれば楽しいですし、迷いも減りますよ。

資料集がかなり使える

この本の1番最後には「作曲作業中に使える資料集」が付いているのですが、これにもう死ぬほどお世話になります。

この項目に、音符の種類やダイアトニックコード表などの「作曲時に頻繁に確認することになる図や表」がひとまとめにされているのです。自分で作る手間を省いてくれて有難みー↑

五度圏表やスケール表、コードネームの表記法なんかはもう何度見返したか知れません。

その頻度たるや、明らかにこの辺りのページだけ他より激しく損傷しているのが見て取れるほどです。

 

文体が優しい

個人的に重要なことだと思っているのですが、この本は一貫して、語りかけるような優しい文体で綴られています。

徹底して初心者を意識しているのでしょう。「作編曲」に対してプラスのイメージを持てるよう、最大限配慮されているように感じます。

教則本も本ですから、書けば作者の人柄が出るのかもしれません。僕がずっと読み続けている理由もその辺りにあるように思います。

全ては「最低限」なので、応用は専門書に頼ろう

この本1冊で中田ヤスタカになれたらよかったのですが、さすがにそれは無理でした。いや、あなたが使ったら違うかもしれませんが。

この本に載っている1つ1つの情報は丁寧かつ十分なものではあるものの、あくまで初期装備に過ぎません。「最低限文化的な作曲スキル」でしかないのです。

あなただけの独創的な表現を目指すなら、いずれは専門書籍の力を借りてより高度な知識を得る必要があるでしょう。

おわりに

僕の所持している個体の183ページが根元から取れたので記念に書きました。

これだけ全力でおすすめした後も全く不安がない良著です。是非見てみてください。

 

そして嬉しいことに、今度(2018年6月中旬)この本の新著が出るそうです。新装版ではなく新著です。

その名も「もっと!思いどおりに作曲ができる本」。これほど購買意欲を煽られるタイトルは初めてです。

内容はそのままにQ&Aを増量し、CD音源をmp3で配信するのが主な違いとのこと。

今から買うならこちらでもいいかもしれませんね。