DTMerがキャリブレーションソフトを導入する事情を暴露【解説とおすすめの紹介】

キャリブレーション、という言葉をご存知でしょうか。

いえ、それはキャトルミューティレーションです。
今回僕が言っているのは、「調整」を意味する言葉の方なのです。

一般的にはイラスト界隈の言葉として知られていて、「ディスプレイで見る色と紙に印刷した時の発色の差を減らすため、ディスプレイ側の色味を調整する行為」のことを指します。

じゃあDTMerには関係ないかと言えばそんなことはなく、DTMの文脈におけるキャリブレーションは「リスニング環境の”クセ”を調整してフラットなモニターを構築する」という意味になります。

 

ちょっと何言ってるかわからない、と思われるのも無理はありません。

しかし現実として、DTM歴が長くなってきた者はかなり高い確率で、このキャリブレーションを導入するようになるという事実があるのです。

キャリブレーションとは一体何なのか。そしてそんな得体の知れない謎の何かを皆が導入する理由は?

今回はこの、あまりスポットライトが当たらない割にミックスの質に大きく関わる話について深堀りしていこうと思います。

 

DTMにおけるキャリブレーションとは

元来、曲のミックスという作業はフラットな(=低音から高音まで偏りなく出る)環境でするのが望ましいとされています。

その理由を端的に言えば、

アホほど低音が出るスピーカーやヘッドフォンでミックスに入る

     ↓

アホほど低音がうるさい

     ↓

「低音うっさいから崖みたいなローカット入れまくったろ!」

     ↓

無事、他の普通の環境で聴くと全く低音が出ていないスカスカのミックスに

こういう事故を防ぐためです。

これは極端に書いた例ですが、実は程度の差はあれ、どの家のDTM環境でも同様の影響が出ているのです。
作った曲をスピーカーとスマホで聴くのでは、微妙にミックスバランスの印象が違うことがないでしょうか。

 

そうなってしまう理由としては、

  • どれほど「フラットな出音!」と謳っているスピーカーやヘッドフォンであっても、完全なフラットではない
  • 使っている部屋の材質などの影響を受け、さらに出音に偏りが出てしまう

大きくこの2点が挙げられます。

そしてそれはすなわち、作り手側の意図しないバランスで曲が聴かれている恐れがあるということになるのです。

せっかく良い曲を書いても、ミックスの印象が悪いせいで聴いてもらえないというのは計り知れないほどの機会損失です。
しかもそのことに自分は気付けないというのですから始末に負えません。

 

つまりDTMにおけるキャリブレーションは、

色んな環境で再生しても、比較的印象の差が少ないミックスを作れるリスニング環境を作る

という目的を持って行われるものなのです。

 

キャリブレーションソフトとその役割

最大の問題は、自分のリスニング環境の問題に気付きにくいことにあります。

誰もがスピーカーを複数台聴き比べられる環境ではないですし、たとえクセを知れたとして

「うちの環境では低音が出やすいから若干控えめにして……」

みたいな先を見越した調整をするというのも正確性に欠けますし、何より面倒です。

 

そこで出てくるのが、所謂キャリブレーションソフトです。

2019年現在のDTM界隈では代表的なものは2つ(後述)ありますが、どちらも

  • マイクを使ってリスニング環境を測定し、問題を特定する
  • 問題のある帯域をソフト上で補正し、スピーカーやヘッドフォンからの出力を修正する

という造りなので、自覚できない音場の問題を客観的に洗い出して修正することが出来るのです。

 

また、音場の補正というものは本来であれば数百万単位の費用をかけ、部屋の角度やら材質にこだわって構築するのが普通です。
実際、ガチのレコーディングスタジオとかはそうやっているのですが、とはいえ個人DTMerがそんな真似をすればDTMどころではない家計状況になってしまうのは明白です。

その点でも、数万円という個人でも手が届く範囲で導入でき、かつスタジオに近い環境を得られるキャリブレーションソフトは重宝されているのです。

それでは、ここからは上で書いた「代表的な2つのキャリブレーションソフト」を見ていきましょう。

 

Sonarworks Reference4

正確に言えば、Sonarworks社からリリースされているReference4というソフトです。

Reference4の強い点は以下の通り。

Reference4の強いトコ
  • スピーカーだけでなく、ヘッドフォンにも補正をかけられる
  • 世界中の有名なスピーカーやヘッドフォンの出音を再現したプリセットがある
  • Systemwideというシステムで、DAW以外のPCの音(Youtubeなど)にも測定した補正をかけることが出来る
  • 専用の測定用マイクは個体差が出ないように補正されている
  • ヘッドフォン補正単体のバンドルも販売している

ちなみに僕が使っているのもこのReference4で、上の画像は実際の僕の部屋での測定結果です。
中低域が変に突出していて、このままでは必要以上に削ってしまいそうです。

そして補正を行った結果がこちら。

やりすぎじゃないかと怖くなるほどの効果です。「フラットってのはこうやるんだよ!」と言わんばかり。

耳で聴いてもその差は歴然で、もうキャリブレーション無しでは違和感が凄くて全くダメになってしまいました。

弱点は価格が高いこと。ソフト本体と測定用マイクで合計4万円くらいします。

「普段ヘッドフォンしか使わない」という方であれば、14,000円でヘッドフォン補正のみを使うことも可能です。
ただし補正できるヘッドフォンは対応機種のみなので、購入前によく確認しましょう。

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ARC System 2.5

音源でも有名なIK Multimediaからリリースされているキャリブレーションソフトです。

※公式サイト(https://www.ikmultimedia.com/products/arc2/index.php?p=images)より引用

ARC System 2.5の強みは以下の通り。

ARC System 2.5の強いトコ
  • 安い。マイク込みでも24,000円程度で買える。
  • カーステレオや携帯電話などで再生した時の出音を再現できる
  • スピーカーに測定システムを内蔵した一体型が発売される(予定)

ARC System 2.5については、何はともあれ値段の安さが目立ちます。

Reference4と比べると1.5万ほど安いですが、もちろん機能差(ヘッドフォンには使えない、DAWしか補正できない等)はあるので、どちらを選ぶかは予算や求めるレベルとの相談になってくるでしょう。

また、このARCシステムを内蔵したスピーカーもリリースされています。

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持ち運べるサイズなので、出先でも補正をかけたミックス作業が行えるのが明確な強みだと言えます。
モニタースピーカーも同時に導入してみたい方には、リーズナブルな選択肢になるのではないでしょうか。

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DTMの投資はモニター環境が最優先事項

「ミックスではモニター環境が一番大事」というのは、そこかしこで聞かれるお決まりのフレーズです。

その対処としてフラットな良いスピーカーを買おう!となるわけですが、それを置く部屋の鳴りまでは考慮されていない場合がほとんどです。
特に日本の住宅環境では物が多くなりがちなので、その影響は小さいものではないでしょう。

そういう痒い所をも含んで調整を行ってくれるキャリブレーションソフトの有用性は、もうお分かり頂けたのではないでしょうか。

 

とはいえ、モニター環境を最初に整備すべきという意見には僕も全面的に賛成です。
いくら強いプラグインを導入したところで、ミックスバランスが組み立てられなければ全てが水の泡なのですから。

特に音質に目が向き始めたくらいのDTMerにとっては、これほど割の良い投資もないのではないでしょうか。
ちゃんとミックスの問題点を把握できるようになるというだけで、いくらでも投資分は回収することができるでしょう。

僕もあと3年早く出会えていればもっと現在が違っていたのでは、などとはあまり考えないようにしています。