なぜ「楽器ができないのに作曲できる人」が存在するのか?【DTM】

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作曲をするようになる前、漠然と思っていた疑問がありました。

「なぜ、『楽器が弾けないけど作曲はできる』人が存在するんだろう?」

間違っても「存在していいのか」という意味ではないので誤解のないようにお願いします。もちろん「どうして可能なのか」という意味での疑問です。

このことを思い出したのは、ネット上で「DTM(作曲)は楽器経験がないとできないのか?」という質問をよく目にするな、と思った時でした。

曲がりなりにも作曲をするようになった今では、少し思うところのあるこれらの設問。しかし裏を返せば、これから作曲を始めたい人の目線でもあると思ったので、今の自分なりに答えてみることにしました。

※ この記事で扱う「楽器経験がない人」とは、音楽理論も全く知らず、今まで音楽はずっと”聴くもの”だった、という感じの人を想定しています。

 

そもそも「楽器経験がないと作曲はできない」は本当か?

結論:別になくてもできる

上記2つの設問には「作曲には楽器経験が必要」という前提が根差していますが、そもそもこれが誤解であるというのが現在の僕の意見です。

その根拠は「実際にやっている人がいる」という事実で、これ以上の実証もないでしょう。僕の知っている限りでは八王子Pビートまりお氏は楽器経験なしで作曲を始めたと聞いています。

作曲とは究極、「どんな音を、どういう風に、どんなタイミングで鳴らすか」を決める行為と言えます。なのでそれが自分の感覚に頼ってできるなら、形にする方法(=DAWの使い方)さえ覚えれば作曲は可能なのです。

当時の僕は「作曲は楽器習熟の延長上にあるスキル」だと捉えていたので、上のような疑問を持ったのだと思います。楽器と作曲の間に”ボールがなければサッカーはできない”みたいな因果関係が無いことを知るのは、もう少し後になってからでした。

 

でも楽器が出来ると「ショートカットが効く」ことが多い

とはいえ、もちろん楽器ができれば作曲する上でメリットがあることは間違いありません。

その内容を端的に言い表すなら、「ショートカットが効く」というもの。

ゴールまでの道のりが短くなる

作曲という行為を分解すると、以下のチェックポイントを通過する道のりだと言えます。

作曲のチェックポイント
  • メロディの作成
  • コード(和音=ハーモニー)の作成
  • リズムの作成

「アレンジ」は厳密には編曲の範疇なので、今回は省略。

これらのチェックポイントを通過してゴール(曲の完成)にたどり着くこと自体は、楽器経験がなかろうと音楽理論を知らなかろうと、時間さえかければ誰でも可能です。

ただ、楽器経験があるとその道のりが短縮されることが多々あるのです。

例えばコード一つ取っても、楽器経験がない人の場合、

  • 「そもそもコードとは何か?」から始まり、
  • 「このコードはどういう時に使えるのか?」を調べ、
  • 「コード進行を作る時のルールは?」と疑問が湧く。

みたいな流れになることでしょう。一方、例えばギターが少し弾ける人の場合、

  • 「コードとは曲の伴奏で弾く、複数の弦を同時に鳴らすアレ」と察しがつき、
  • 「コード進行にはよく出てくる定番のモノがある」ことを知っていて、場合によっては
  • 「メジャーとマイナーの違いは1つの音が半音違うだけ」であることを弦の押さえ方から気付いているかもしれない。

こうなり、そこには明確にスタートラインの違いがあるのです。

 

「曲に参加する体験」が作曲に役立つ

その差がなぜ生まれるかと言えば、それは単純に楽器演奏という「曲に参加する体験」が、そのまま作曲という「曲を構成する行為」に流用できるからに他なりません。

つまり、

作曲に流用できる体験

  • メロディ → (コードに対してメロディを奏でる経験)
  • コード → (各コードの雰囲気、定番の使い方)
  • リズム → (他の音とタイミングを合わせる経験)

()の中の経験が実体験として蓄積しているため、自分で再現することも(個人差はあれど)感覚的にできるというわけです。

しかし作曲を道のりに喩えるならば、楽器経験はあくまで乗り物に過ぎず、徒歩(楽器経験なし)でも同じ道を行くことはできるのです。時間と労力はかかるでしょうが、楽器経験者には楽器を練習していた時間があったわけで、実は本質的な差は無いとも言えます。

逆に言えば、どんなに楽器経験が豊富でも作曲の練習を怠っていると、経験なしで始めた勤勉な人に技量で抜かされるという、兎と亀的状況にもなるでしょう。書きながら自分の兎加減が思い出されて死にたくなってきました。

 

これから作曲を始めるなら、どうするのが良いか

一番は楽器と作曲の同時並行

もちろん人によって最適解は違うという前提ですが、作曲能力を養うことだけを考えるならやはり、楽器と作曲を同時並行でやるのが最もおすすめとなります。

楽器は興味のあるものが最優先ですが、悩むならピアノやギターなど、メロディとコードどちらも鳴らせる楽器の方が作曲の上では有利です。

楽器の練習により、作曲の三大要素「メロディ、コード、リズム」が言葉でなく感覚で理解できるようになりますし、様々な奏法を知ることは後々、アレンジの段階に進んだ時にも必ず役に立ちます。

 

”楽器が上手くなってから作曲を始める”はおすすめしない

そうなると「楽器がある程度上手くなってから作曲を始めよう」と考えがちですが、個人的には(あくまで作曲が目的であるなら)同時並行が大事だと考えます。

基本的に作曲と演奏は別スキルだと思った方が良いです。重なるところが大きいだけで、いくら演奏が上手くなろうと、新しく生み出す力は一向に培われません。そしてそれは、実際に作ることでしか養われない能力なのです。

 

楽器をやりたくない場合

とはいえ、どうしても興味の湧かない人に絶対に楽器をやれなどと言っては、もはやアドバイスではなくヒステリーに近いでしょう。

上で書いた通り、楽器をやるメリットは作曲に役立つ経験が多面的に得られることにあります。ならば楽器としてDAWを使う意識を持つことで、擬似的にその効果を得ることができるはずです。

例えば練習として既存曲の耳コピをするとして、ただDAW上に機械的に再現するのではなく、「このコードの上で鳴るこの音が気持ち良い」みたいな感覚を意識する、ということです。「楽器ができないのに作曲できる人たち」も、その繰り返しで上達してきたのではないかと僕は推測しています。

ただ、この方法だと楽器の奏法は知識として別に学ぶ必要があったり、適当にコードを弾きながら作曲する、みたいなことがDAWでは少しやりにくかったりと、デメリットがあることも覚えておいてください。

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”あなたが”出来るようになるか?

作曲をやってみたい、と考えている人が「楽器経験がなければできないのでは?」と不安になるのは、作曲のスタートからゴールまでを経験したことがなく、その道のりがどんなものか分からないからでしょう。

なので一応、何曲も作ったことのある自分が通ってきた道を振り返って言うなら、「楽器経験がなくても作曲はできる」という結論になります。しかも理論上は可能、みたいな細い希望ではなく、わりと再現性も高いと感じます。

しかしこれはあくまで一般論であり、現実として、作曲の途中で上手くいかなくて挫折する、というようなことが人によっては起こり得るでしょう。その理由によっては持ち直すことができるかもしれないし、そうならないかもしれません。

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そう、結局のところ、「”あなたが”作曲できるようになるか?」は予測で答えを出すことができないのです。実際に作曲を始め、どこに楽しさを見出し、どこが分からないのかを感覚で把握していく事の他に、出来ることはありません。

しかし難しく考える必要はなく、やってみて、上手くいかない所は調べて克服していく。シンプルにそれだけで良いのです。微力ではありますが、このブログがその一助になれば幸いです。

 

ABOUTこの記事をかいた人

当ブログ管理人です。 DTMを10+x年、ひっそりやっています。 記事内容をもっと詳しく知りたくなったら是非、オンラインレッスン↓へどうぞ。