「全自動ギターチューニング機」。
あんなこといいなできたらいいなの筆頭とも言える、この架空のガジェット。のび太ならずとも想像したことのあるギター弾きはきっと、多いことでしょう。
普段は自然にやっているチューニングという作業も、早く制作に取り掛かりたい時に弦がダルダルだとやる気が削がれてしまうことが往々にしてあります。「これがホントの”テンション下がる”だねw」なんて煽られた日には何をするか分かったものではありません。
そんな時、勝手に弦の音程を合わせてくれる機械があれば……。そう思ったことは一度や二度ではありませんが、もう子供じみたことを言っている歳でもないしと手でペンペンやっていたところ、普通に売っているのを発見したのがつい先日のことでした。
その名も「Roadie3」。まさに頭の中で描いていたそのまんまの機能と、知らない所で1と2が存在していた事実に頭がどうにかなりそうでしたが、後日届いた実物はその全てを忘れさせてくれる程の威力を持っていたのです。
目次
Roadie3とは
新手の電子タバコのような、ギター用の電動オートチューナーです。
その実力の程はカタログスペックでは伝わらないでしょう。↓が実際に使用している場面です。
僕がソシャゲにうつつを抜かしている間に世間は進歩していたのだ pic.twitter.com/LWLQO7Corl
— 1176@ボカロP&DTMブログ (@1176fire) April 15, 2021
見ての通り、本体上部の突起にペグをセットし弦を鳴らすと、振動を感知し自動でチューニングを合わせてくれる仕組みが実現しているのです。このやり場のない待ってましたをどこへぶつければ良いのでしょう。
僕はもう公式の動画を見た瞬間に購入を決め、値段がいくらでも働けばいいやくらいに思ってしまった程の衝撃でした。実際導入した今も、今年1の良い買い物だったと断言できます。
そしてこのRoadie3、単なるモーター式チューナーに留まらず、チューニングという作業そのものに対してかなり考え抜かれた造りになっているのです。
使用レビュー:強み
チューニングが面倒でなくなる凄さ
パッと見、一周30秒前後まで迫るスピーディーなチューニングに目が行きがちですが、Roadie3の真価は個人的に「チューニングの心理的ハードルが下がること」にあると思っています。
冒頭で書いたような早く制作に入りたい時、あるいは制作がノっている時などに
- チューナーを起動、用意
- 表示を見ながら慎重にチューニング
- ×6回
この作業が挟まるだけで、どうしても勢いは落ち着いてしまうもの。音程がピッタリ合わない電撃イライラ棒的状況に陥ったりすれば尚更です。
それがRoadie3の場合、本体をペグに嵌めて弦を弾く、を脳死で繰り返すだけでOK。
目標をセンターに入れてスイッチと同レベルの意識でいいのですから、「結構激しくチョーキングしたし一旦チューニングしとこうかな」なんて殊勝な考えを持つようになったのも頷けるというものです。
特にダウンチューニングを多用する音楽をやるなら、計り知れない恩恵があると思います。もちろん、それを可能にするだけの正確なチューニング精度であることは言うまでもありません。
汎用性の高さ
また、その汎用性の高さも特筆すべきでしょう。
- シールド不要
- 振動感知式のため騒がしい場所でも使える
- カポを付けたままチューニングできる
- オリジナルチューニングの保存も可能
- 7弦、12弦などの多弦にも対応
- エレキだけでなくアコギやクラギ、ウクレレやマンドリン等にも使用可能
- 弦交換時にペグを締めor緩め続ける機能
- 練習用のメトロノーム機能
と逆に何ができないんだ感のあるラインナップの中でも、特に目を引くのが③と④。
まずカポですが、装着した位置をRoadie3側で設定してあげれば付けたままチューニングが可能なのです。
普通のチューナーだとよくある「2カポした時の各弦の音が咄嗟に出て来ない」みたいな状況も、Roadie3が勝手に合わせてくれるので自分で確認しなくていいのがQOL爆上がりって感じで良いですね。
そして技巧派ギタリスト御用達の変則チューニングも勿論、守備範囲です。
全・半音下げやドロップCなど主要なモノの殆どは最初から収録されており、オリジナルのチューニングも保存可能。中には聞いたことも無いような謎のチューニングまであり、試しに合わせてみたら「絶望」みたいな感じの音が出て面白かったです。
この機能は特に、ライブで曲ごとにチューニングを変えるような場合に威力を発揮するでしょう。その曲専用のギターを複数本持ち込む力技はもう必要なく、Roadie3を一つ持参してMC中に直してしまえばいいのですから。
モノ自体がよく出来ている
Roadie3本体そのものも結構よく出来ていて、まずめっちゃコンパクトかつ軽量です。
サイズは本体部分が7.5×5.4×2.8cmで、そこから突起部分が1.7cm(いずれも実測)くらい。重量は詳細が不明ですが片手で楽にお手玉できるくらい、と言えば大体伝わるでしょうか。
結果としてうっかりどのポケットに入れたか忘れてしまう程の存在感なので、自宅練習から遠征ライブまでどこへ持ち歩いても、負担になることはまずないでしょう。
また、なんか充電がやたら持ちます。公式では「一回の充電で150弦のチューニングが可能!」と謳われておりイマイチ凄いのか分かりませんが、少なくとも毎日触っている僕の環境では一週間とか平気で動くのでビビることもしばしば。
ちなみに充電端子はType-Cで、USB-AtoCのケーブルが最初から付属しています。
あとは今時のガジェットらしく、スマホアプリとの連動が可能です。
Bluetooth接続で、本体のアップデートや上で触れたオリジナルチューニングの保存なんかをコレで行います。またその設定もヘルツ単位で調整できたりするので、441Hz派の友達とも仲良く使えるのが嬉しいポイントです。
使用レビュー:弱み
目的の音まで遠すぎると検出精度が下がる
例えば1オクターブ近く音が変わるような状況だと、何度弦を弾いてもRoadie3側が認識してくれない場合があります。特に1弦でその傾向が見られました。
あくまで「僕の環境では」という注釈が入りますし、そもそもそんな極端なチューニングもなかなか無いでしょうが、例えば弦の張替えなどの際はワインダー機能を使うなりして、ある程度目的の音に近づけてからチューニングするのをお勧めします。
とはいえ、普通(?)にレギュラーとドロップCを行き来するくらいの範囲なら何の問題もないので、かなり特殊な条件下では起こり得る、くらいに捉えておいて貰えればと思います。
充電が切れたら置物に
充電式の宿命はRoadie3も例外ではなく、電池が切れたら終わりです。ウリだった軽量化が仇となり、文鎮として使うこともままなりません。
ただこれだけスマホが普及した現代ですから、モバイルバッテリーを持ち歩いている人も多いでしょう。可能ならType-Cに対応しているモノだと使い勝手的にもベストです。
ベース非対応
正確には別製品なので、Roadie3では残念ながらベースのチューニングが非対応です。
チューニング2.0
現在は普通に販売しているRoadie3ですが、元々はクラウドファンディングで支援を募っているのを見つけたのが始まりでした。
最終的に予定の倍以上の支援が集まる人気ぶりで、僕が発見した時には既に定価より安く買えるプランが軒並み死んでいて悲しい出会いだったのを思い出します。でもそれくらい、ギター界隈にとって画期的な商品だったという事でしょう。
実際、ライブのMCタイムにコレでチューニングしていたら会場のギターキッズにバカ受け間違いなし。ボーカルが雑にトークを振ってきても商品紹介に徹することで、自分の身を守ることすらできるわけです。
Roadie3を買ったら宝くじの一等を当てた恋人ができた、とまでは言いませんが、ギター生活が少し向上したのは疑いのないところ。MCのトークネタに困っているなら是非、導入してみてはいかがでしょうか。