前回は「そもそもなんでコンプ使わなきゃダメなの?」という人向けのお話でしたが、今回は「使い”たいっ!!!!(コンプを)」という人向けの、コンプに付いてるツマミ達の使い方のお話です。
ちなみに今回ツマミの例として用いるのは「Manic Compressor」というコンプ。
これがなんと入力した音が波形で表示され、なおかつ自分で設定したコンプの効き具合も図で見れるという、嘘みたいに分かりやすいコンプなのです。
マジで初めて触ったコンプがコレだったら数年早く理解できていたと思います。記事が始まる前に出鼻をくじかれたような悲しい気持ちになってきました。
その悲しみをぶつけたレビュー記事もよろしければどうぞ↓
コンプに付いてるツマミ達
いわゆるイカれたメンバーを紹介するぜ!というやつです。
- スレッショルド
- レシオ
- アタック
- リリース
- ゲイン
コンプ自体は各メーカーから星の数ほどリリースされていますが、これらのツマミはコンプとして機能するために不可欠なツマミなので、ほぼ確実に付いています。
これらをベースとして、「それ以外にこんな機能を付けたったぜ!」という部分でメーカーは差別化を図っているわけです。
スレッショルド
「この線より大きい音は叩いて潰すよ!!」というラインです。サイコパスみたいで怖いですね。
スレッショルドで設定した音量より大きな音が入力された時、この後のツマミで設定した内容に沿った圧縮が掛かります。
スレッショルドを下げていくと、入力音がラインを超えて圧縮されている(赤いやつ)のが分かりますね。
なので程度の差はあれど、スレッショルド値をコンプに入力している音の音量より下回るように設定してあげないと、仮にこの後出てくるツマミを全て限界まで回しても音が全く変化しないため、注意が必要です。
レシオ
スレッショルドを超えてきた音を「何分の1に潰してやろうか?」という設定です。
(設定した数値):1に圧縮する、ということで圧縮比とも呼ばれます。
スレッショルドは固定したままですが、レシオが大きくなると強く圧縮されていきます。レシオ2、レシオ4、レシオ6、というのは、元の音量から2分の1、4分の1、6分の1に圧縮する……という意味合いです。
逆に1:1、つまり「元の音量から変わらないようにする」という設定にすると、全く圧縮されません。
画像でも紫の部分がまっすぐになっている(レシオ1:1)時、圧縮を示す赤いやつが出ていないのが分かるかと思います。
従って、コンプを作動させるにはスレッショルドとレシオの両方が同時に設定されていなければならない、ということになります。
アタック
正確に書くと「スレッショルドを超えた音がレシオで設定した圧縮比率に到達するまでの時間」というラノベかみたいな感じになってしまいます。
なので機能の本質である「音の立ち上がりをどれだけ残すか」というツマミなのだと覚えるやり方がおススメです。
そもそも「アタック」というのも、「音の立ち上がりの部分」を指す名詞だったりします。
アタックは1つの音が鳴る時に最も音量が大きく、かつ、その音のキャラクターが色濃く出る部分です。
例えば完全な闇の中で何かモノを叩いたとして、「カッ」という音がすれば「固い物の音だ」、「ボフッ」という音がすれば「柔らかい物の音だ」と感じると思います。これは音にアタックがあるかないかを無意識に感じ、音のキャラクターを感じている例の1つと言えるでしょう。
曲の中では様々な音が一斉に鳴るため、このアタックがある音ほど目立ちやすく、無い音ほど目立ちにくくなるのです。
つまりコンプにおけるアタックのツマミは、0に近づける(速める)ほどアタックを潰して音を目立たなくしていき、0とは反対の方向に回す(遅くする)ほどアタックを残して存在感を出すことが出来るツマミなのです。
同じ音を2回入力し、アタックを1回目は最速に、2回目は遅めに設定した時の画像です。
1回目は音が鳴るのとほぼ同時に圧縮が掛かりきっているのに対し、2回目は徐々に圧縮量が増えていってピークを迎えるのが少し後ろになっています。圧縮が掛かり切るのが遅れる分だけ、アタックが残る形になります。
コンプでアタックを設定する時は、その音が目立ってほしいのか、それとも後ろにいて欲しいのかという基準で決めてあげると良いでしょう。DTMブログでよく見る「コンプで前後感を作る」というフレーズは、このことを指しているのです。
リリース
このツマミで指定した時間の分だけ、音量がスレッショルドを下回ってからも圧縮を継続することが出来るという機能です。
なぜ継続する必要があるのか?ですが、
スレッショルドを下回ると同時に「完全に」圧縮が解除されてしまうと、急すぎる音量差が発生するので音が割れたり、ポンピング(不自然に音が前後しているように聴こえる現象)が起きてしまったりするのです。
よく分からなければ急に冷たいものを食べると胃がビックリするから徐々に慣らしていった方がいい、くらいに捉えておけば大丈夫です。
また「リリース」もアタックと同様に、「音のピークの後のだんだん減衰していく部分(余韻)」を指す言葉でもあります。
このリリースがしっかり聴こえるほど「重さのある、しっかりした音」に感じられますが、かと言って曲中の全ての音でリリースを残してしまうと、曲全体がモワモワ曇った印象のミックスになってしまいます。
つまり、リリースを設定するときは「その音の余韻をどれだけ残すか?」という尺度で考えるべきです。
ツマミが0に近づくほど余韻が残って音の重さが増し、反対側に回すほど長く余韻が切られてアタックだけが残る軽めの音になっていきます。
リリースを短めに設定した時
リリースを限界まで長く設定した時
リリースの長い方はもうとっくに音量がスレッショルドを下回っているのに延々と圧縮が続いていて、何か少し狂気じみたものを感じますね。
ここまで極端な設定にはしなくとも、次の音が入ってくるまでに圧縮が解除されるように長さを調整すると、ちょうどよく余韻が整理されていきます。
逆に圧縮が次の音に被るほど長く設定する、というやり方も全然アリです。その場合、かなり”ガチガチにまとまってる感”が出るので、パッドやストリングスのような後ろで鳴っていて欲しい系の音には良いアプローチでしょう。
ゲイン
全てのツマミの中でもっとも単純で、「コンプで潰した後にどれだけ音量を上げるか?」というものです。
コンプに通された音は圧縮された分だけ音量が小さくなるので、その分、ボリュームを上げることが出来るのです。前回の記事で書いたコンプの当初の目的が果たされている形ですね。
よくゲインのおススメ設定として言われているのは「コンプを通す前と聴感上の音量が変わらないように調整する」方法。
実際におススメでして、こうすると「コンプを通したことで得られた効果」だけが分かりやすくなります。
ヒトの耳は複数の音を比較するとき、音量の大きい方を無条件に「いい音」だと感じる傾向があります。なのでゲインで上げないでいるとコンプを通したことで音が小さくなり、迫力が無くなったように誤解しがちなのです。
主要なツマミはこれで全て
以上の5つが、コンプにほぼ必ず付いているツマミ達です。これらが理解できればどのコンプでもある程度使えるようになります。
たまにLA-2Aや1176LNみたいにアタックやスレッショルドが付いていないように見えるモデルもありますが、調整できないだけで内部で設定されているものがほとんどです。
そして次回の記事では、上記の5つ以外に「付加機能」として付いていることが多いツマミや機能についてまとめていきます。
基本的に上の5つの発展形だったりするものが多いので、今回紹介したツマミに対する理解を深めておくと、より分かりやすいと思います。