「でも日本には四季があるから…」というフレーズは基本的にポジティブな意味で用いられるものですが、ことマイクの保管に限ってはそうもいきません。
一般的にマイクの保管に適した湿度が30~50%と言われる中、湿気大国日本の年間平均湿度は約60~70%と殆どダブルスコアを記録しており、夏場にマイクを放置して寝たりすれば、翌朝にはマイクだった何かになっているというリスクが常に付きまとっているのです。
しかし初めてマイクを導入するくらいの時に、そんなトリビアを持ち合わせている人は多くないでしょう。結果として何か様子が変だなと思った時には既に、アンパンマンよろしくカビが繁殖していたという悲劇が起こるわけです。
しかしだからこそ、そうして高い勉強代を払い続けてきた歴史の果てに人は「RC-21L」を生み出したのかもしれません。
この個人用防湿庫のエントリーモデルが高温多湿列島のマイクにどんな変化をもたらすのか、その詳細をお伝えしたいと思います。
Re:CLEAN「RC-21L」とは
Re:CLEAN社からリリースされている、個人用防湿庫です。
防湿庫とはその名の通り、中の湿度を一定に保つことの出来る保管庫のこと。「デシケーター」とも呼ばれ、マイクやカメラなどの湿気に弱い機械類を保管するために使用されます。
このRCシリーズは21Lから180Lまで容量別に5段階のラインナップがあり、今回導入したのは最も小さいサイズのものになります。購入の決め手は
- 同容量の他社製品と比較した時、若干安い
- 見た目がシック。デカいロゴマークとか無く、湿度表示がアナログ計
の2点に加え、僕の場合は手持ちのマイク(3本)が入れば良く、今後増える予定もないため、必要最低限のスペースで済むサイズが望ましいということでコレになりました。
外観と造り
使用に当たっての手順としては、
使用準備
- 湿度計を付ける
- 内部のダイヤルで湿度を設定する
- 電源アダプターを接続する
これだけ行えば後は自動で湿度の調節がなされ、設定の湿度に達した状態で保持されるという至って単純な造りになっています。
外寸はH:25.2cm(脚含む)W:35cm D:27.5cm で重量が4.6kg。邪魔に感じる程ではないですが割と存在感はあります。
内寸はH:18cm W:34cm D:21cmで、マイク3本を余裕を持って並べられるくらい。縦のスペースがやけに空いているのは、元々はカメラ用に作られていることの名残でしょう。
内部には湿度設定のダイヤルが。表示がズバリ湿度だったら設定しやすかったのですが、程度を表す数字なので湿度計を見つつ調整する必要があります。
そして個人的には結構大きいポイントだった、アナログ型湿度計。どうして計器というものはこんなにも僕たちの心を揺さぶるのでしょう。
扉には付属の鍵で施錠が可能です。もちろん防犯の意味が強いでしょうが、幼児やペットが走り回る感じのご家庭では、不慮の事故を防ぐことにも役立ちます。
導入した結果
これまでは定番の「ジップロック+乾燥剤」セットでマイクを保管していたものの、1本数十万クラスのモデルを入れるにはどうしても不安と生活感が拭えない見た目なので、安心を買うつもりで導入したRC-21L。
そういう意味では、これ以上ないほどの安心感を得ることができています。常に管理、表示される湿度とガラス越しのマイクを見ているだけで、まるで自分が成功者になったかのような気がするほど。
しかし裏を返せばただそれだけとも言え、プラグインや音楽機材と違ってレビューするほどの内容が無いことに2千字近く書いてから気付いたので、目の前が真っ暗になってポケセンからやり直しになりそうになりました。
とはいえ稼働から既に(記事執筆時点で)4ヶ月以上経過していても、常に設定湿度からほとんどブレずにキープしている安定性は評価すべきでしょう。扉を開け閉めした直後はそれなりに変化がありますが、それでも15分もすれば元に戻ります。
他にも、
- 乾燥剤の出し入れなど気を使う必要がない
- 駆動音がほぼ無音
- 電気代は1日当たり約1.8円程度
辺りは優秀な点です。電気代は公称ですが、ここ数ヶ月の電気代に大きな変化がないことを考えると妥当な範囲と考えていいと思います。
1つ言うなら、持ってるマイクが1本だけとかなら手間を承知の上でジップロックでもいいかもしれません。防湿庫はサイズなりに場所を取るので。
勿論その1本が高価なものであるならば、保険としてRC-21Lを導入しておくのはお勧めのやり方です。8,000円しない価格で最低5年の保険(メーカー保証)と考えると、1年で2万するiPhoneの保険よりは割りが良いと思います。
防湿庫先に立たず
Youtuberや配信者、歌い手などが社会的成功を収める昨今、ネットドリームを夢見る人々の増加に比例してか、マイクを購入するご家庭が増えていると聞きます。
先行投資として買った少し高めのコンデンサーマイクにどんな夢を重ねているのかは人それぞれですが、その熱に紛れる形で保管の問題が見落とされがちです。この記事がその辺を少し埋められていることを願っています。
行動を起こす前に出鼻をくじかれるのは誰もが避けたいところ。まだマイクを壊したことがないのなら悩めるうちに一度、保管方法を検討してみてはいかがでしょう。