【初心者用コンプ講座3】どんな音源にもコンプレッサーを設定できるようになる手順【設定方法】

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コンプを使う理由、ツマミの効果と来て3回目の今回は、いよいよ「コンプの設定方法」です。

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2023.09.30

 

大体の講座だと「使い方は以上です。あとは実際に使って慣れよう!」とファミ通の攻略本みたいな終わり方をするのが常ですが、そうなる理由は「使う対象や目的ごとに設定値が違いすぎて一概には言えない」から。

ネットや書籍で「ギターのコンプ設定」みたいな数値を見かけることもありますが、それはあくまで傾向としての話であり、現実として、カッティングとパワーコードで同じ数値に設定することはほとんどないでしょう。

 

やはり最終的には「目的に合致した効果を得られる数値」を自分で設定できるようになる必要があるわけです。

そこで今回は、どんな音源にも目的に沿った数値を設定できる手順というものを紹介したいと思います。

特にコンプに馴染みのない初心者にとっては、1つのセオリーとなるので有効です。

この手順に従って音を聴きつつ設定することで狙った通りの効果が得られ、テストの点は向上し、部活も上手くいって志望校に合格してしまうことも夢ではありません。

 

おススメの設定手順

「ARRT」とも呼ばれる手法です。NERVみたいでカッコいいですね。

すなわち、Attack→Release→Retio→Thresholdの順で設定するという手法。

スレッショルドを下げれば下げるほど深くコンプが掛かるので、最初に他のツマミで「どういう感じに圧縮するか?」を設定しておき、「その効果をどれだけ強く出すか?」をスレッショルドの下げ幅で決める、というやり方です。

そしてこれに、「ツマミの設定値を極端にする」という手法を加えます。

具体的な手順は以下のとおり。

コンプの設定手順
  1. 全てのパラメータを極端に大きく(最速、最大など)設定する
  2. アタックが欲しい程度出てくるまで、Attackを下げていく
  3. 音の重さが欲しい程度出てくるまで、Releaseを速くしていく
  4. 潰している感じ(コンプ感)がどれだけ欲しいか?でRetioを決める
  5. 上記の効果をどれだけ強く出すか?をThresholdで調整する

①で全てのツマミを極端な設定にしておくことで、各ツマミの効果がわかりやすくなり、求める設定に辿り着きやすくなります。

ポイントは「ツマミを調整する時は曲全体を再生して聴きながらやる」ということ。

どんな音も最終的にはミックスの中で鳴ることになるので、他の音との干渉具合を確かめながら調整する方が良い結果になりやすいのです。

 

目的別の設定方法

上記の手順を踏まえて設定すれば、少なくとも「自分の目的に沿った設定」には行きつけるようになります。

その上で「コンプを掛ける目的」から逆算した設定方法も代表的なものをいくつかまとめておきます。

コンプの効果が感覚的に掴めてきたら試してみてください。

 

音圧を出す、音を後ろに追いやる

この場合、音圧を出す妨げになりやすく、存在感の源でもあるアタックを削る方向のアプローチになります。

ちなみに「何故アタックにそういう性質があるのか?」に関しては第2回の記事を参照してください。

アタックを抑え込むのが目的なので、基本的にAttackは最速、Retioは効果が分かる程度に高めに設定する必要があります。

Releaseは次の音に被らない程度にしておくか、逆にメタルのギターなどでガッチリ固めたい場合は長めに設定してかかりっぱなしにするのもアリでしょう。

最後にThresholdでかかり具合を調整します。

アタックの部分だけ引っかかる程度に設定するとちょうどいい効果になることが多いですが、他の楽器との兼ね合いをよく聴くことが最も重要です。

 

音のヌケを良くする、前に出す

上記とは逆に、アタックを強調することで音の存在感を出すような処理になります。

考え方としては「リリースを抑えることで相対的にアタックが強調されるようにする」というものです。

したがって、Attackはアタックがしっかり残るまで遅めに設定し、Releaseは長めに設定して余韻をしっかり潰します。

この時、次の音にリリースが被らないように注意しましょう。せっかく作ったアタックがまたならされてしまいます。

RetioとThresholdは高く・深くするほどアタックが強調されますが音が軽くなっていくので、曲を聴きながらちょうどいいところに設定します。

 

ミックスが濁る、モワモワするのを取り除く

ミックスの濁りは、その原因である余韻を切って音を整理することで改善できます。

つまり上の「音のヌケを良くする、前に出す」の処理をすればいい、ということになりますが、ここで曲中の全てのパートに対してそうしてしまうとアタックばかりが残った軽い印象のミックスになってしまうのです。

ではどうするかと言うと、曲中のパートに優先順位をつけて処理する方法がおすすめです。

メタルではギター、バラードではピアノ、スウィングならブラス……といった感じで、その曲で目立つべきパートを1~2個に絞り、それ以外の比較的重要でないパートの余韻を切ることで帯域を整理するのです。

前回の記事でも書いた通り音のキャラクターはアタックに多く含まれるので、重要でないパートはアタックだけを残すことで存在感は残しつつ、ミックスの邪魔をしないように処理することができるという寸法です。

 

実を言うとこの処理、この雑誌で知って実践したらすごく効果があったやり方だったりします。

サンレコと言えばDTMer界のジャンプみたいな立ち位置なのでもうご存知かもしれませんが、プロのノウハウってやっぱすごいですね。(小並感)

 

重要視すべきは「目的」

コンプに限らないかもしれませんが、プラグインの設定にはその先に到達したい「目的」があることが重要です。

特に初心者のうちは「皆使ってるしコンプ使わなきゃ(使命感)」という義務感のような感情が先行しがちですが、本質としては、

ボーカルの音量差を縮めたい、ドラムをパツパツにしたい、ピアノの存在感を出したい。

そういう混じりけの無い”願い”を叶えるための手段がプラグインなのです。

僕もDTMを始めて数年経ちますが、未だにそのことをよく忘れます。セールという言葉に勝てたことが一度もありません。

プラグインというものは何せ高いので、掛けたら勝手に音が良くなることをどうしても期待してしまいますが、あくまでイメージの音に仕上げるための道具であることを忘れないようにしたいものです。

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11 件のコメント

  • 初めまして!コンプについての記事、拝見させて頂きましたー!

    コンプについては色々な解説ページがありますがこちらの記事が一番分かりやすかったですし、コンプ使ってみよう!楽しそう!と思えました(*´ω`*)

    自分はまだまだコンプ使い慣れない勢なのでこの記事を参考にチャレンジしたいと思います!
    素敵な記事をありがとうございました!

    • こんにちは、ご丁寧にありがとうございます!

      お役に立てたようでしたら何よりです!
      コンプはプロでも「雰囲気で使っている」と言うほど奥の深いエフェクターで、Twitterで「コンプ完全に理解した」などと言えばジョークとして受け取られてしまうほどです。
      とはいえ結局は単なるエフェクターですので、結果、自分の求める効果が出ているなら設定など何でも良かったりします。

      ぜひ気楽に考えて、自分なりの「良い結果が得られる使い方」を見つけてみてください。

  • コンプ解説系記事で初めて腹落ちしました。文章が平易で分かりやすかったです。
    本当に雰囲気でコンプを使っていましたが、これからはちゃんと使えそうです。ありがとう。

  • こんばんはすごくわかりやすいです。文章が面白くて読んでてたのしいです。ひとつだけコンプレッサーについて気になった点があります。僕の使ってるコンプレッサーにはinputとoutputというのがあります。こちらの違いはどういうものですか?数値を上げれば大きくなるしかわかりません。

    • ご覧頂いてありがとうございます!
      inputは「コンプに入力されている音の音量」を決めるもの、outputは「コンプで処理されて出ていく音の音量」を決めるものです。
      エフェクターは入ってきた音が大きすぎたり小さすぎたりするとコントロールしづらいので、そういう時にinputで音量を調整します。
      また逆にエフェクターで加工された音も元より小さくなったり大きくなったりするので、その時にoutputで音量を調整するのです。

      • こんばんは!inputとoutputの説明わかりやすくておお確かにとなりました。ありがとうございます。壁にぶつかっています…あれから悪戦苦闘しながらどんぐりの背比べのようにコンプレッサーで音を大きくしてる中で、0dbに近くした僕としては完成したと思っている歌ってみた音源を聴くとお手本としてる音源に比べてinstや歌の声がどっちも小さかったりします。それの原因は
        ①ratioの比率が少ない
        ②input outputの上げ量が少ない 
        ③attack と releaseとthreshold関連。(attackは最速にすればするほど音が重くなっていき、反面ぼやける感じがわかりました。でもrelease は僕の耳では違いがわかりません。1176さんを参考に次の音が出るまでに終わるようにしか設定できません。Thresholdに関してはどこから掛けたらいいかわからないため、サビや自分が大きく歌った所から掛けるようにしてます。)

        原因はどれが一番大きいのでしょうか?それともコンプレッサー以外の何かが欠けているのでしょうか…? 

        • こんにちは!
          ご質問としては音源全体の音圧を上げたい、ということになるかと思いますが、その場合は「リミッター」と呼ばれるエフェクトを使います。
          文字数の関係上詳細は割愛しますが、これをマスタートラックに挿して使用することで全体の音圧を上げることができます。
          しかしただ歌とオケを合わせただけのものに使用すると、大抵の場合は目標とする大きさに達する前に音割れしてしまいます。
          なので下処理として歌をコンプなどで均すのですが、歌はAメロとサビで音量差がありすぎたりしがちなので、パート毎にトラックを分けて処理するなどの工夫を要する点に注意してください。

  • コンプの記事、解説、大変分かりやすく、勉強になりました。当方、五十代後半のおじさんですが、25年ぶりにDTM始めました。以前はアナログでしたから隔世の感が有ります。
    他の記事も読ませていただきます。
    ブログ頑張ってください。

    • 記事をご覧頂いてありがとうございます!お役に立てたようでしたら何よりです!
      DTMにおけるアナログの価値は一向に変わらないので、デジタルネイティブ世代の僕はアナログ主流の時代が羨ましく感じます。。。
      このブログが作曲のお供になれましたら幸いです!

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    当ブログ管理人です。 DTMを10+x年、ひっそりやっています。 記事内容をもっと詳しく知りたくなったら是非、オンラインレッスン↓へどうぞ。