【耳コピ講座1】ドラムから始まる耳コピ生活

ドラム 耳コピ

「耳コピができるようになりたい」

という文字通りのクソデカ感情はいつの時代も、初心者DTMerに呪いのようについて回るもの。今日もどこかの知恵袋で、耳コピのコツを求める声が渦巻いていることでしょう。

そんな姿をそこかしこで見かけるが故に、↓のような耳コピを楽にするための記事をいくつか書いてみたりもしたわけですが、

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よくよく考えたら実務的な話を全くしていないことに気が付いたので、今回から何回かに分けて自分なりの「耳コピ講座」をまとめていきたいと思います。

1曲丸々コピーすることをゴールとするなら、最初にドラムを採っておくと他の楽器を採る時の目安になるのでスムーズです。従って、初回のテーマは「ドラムの耳コピについて」

割と長めになってしまったので、必要なとこだけ拾い読みしたり何回かに分けて読むなど、適宜いいようにやって頂ければと思います。

 

前提知識1:ドラムの各パーツと役割

ドラム 耳コピ

勢いよく耳コピに入る前に、まず「曲中で登場する音」を知っておきましょう。

鳴ってる音の種類が分からないと、全て同じ音に聴こえる……は大げさですが、単純に打ち込みで再現することができないからです。

 

キック

キック 耳コピ

 

文字通り足で踏んで音を出す造りの、低域を担当するパーツです。

後述するスネア、ハイハットと共にリズムの要を担うので、その重要度はかなり高め。ヤンキーの車から響いてくる低音は大体コレです。

 

スネア

スネア

 

大体、中域辺りを担当しています。キックを「ドン」としたら「パン」がこのスネアです。

見方によっては可哀そうになるくらい叩かれまくるので、音楽に詳しくなくても存在を認知している人は多いでしょう。

単純な見た目に反して叩き方がいっぱいあり、極めようとすると案外奥が深いという一面も持ち合わせています。

 

ハイハット

ハイハット 耳コピ

 

高域を司る、曲中でチッチキ鳴ってるアレです。キック、スネアと合わせ、この3つでその曲の基本的なリズムが決定されます。

よく見ると2枚の金属板が重なっており、その開き具合で音色が変わるという特徴を持ちます。↑の音源は前半が閉じた状態、後半が開いた状態です。

実際に演奏する上では開く・閉じるだけではなく、「1/3だけ開く」「徐々に開いていく」などの微妙な操作が伴うので、耳コピの際はそこにも注意しましょう。

 

シンバル

クラッシュ 耳コピ

 

小節の変わり目やフィルイン(後述)など、強調したいところで鳴らされるパーツです。生で鳴らすと世界中の人が振り返るくらいデカい音がします。

主に種類が3つあり、それぞれ

  • クラッシュ
  • チャイナ
  • スプラッシュ

……シンバルと呼ばれ、微妙な音色の違いから場面ごとに使い分けられます。

登場頻度の体感としては「クラッシュ>>スプラッシュ>>>>>チャイナ」くらいの感じ。↑の音源で上から順に鳴らしていますので、音の違いをよく覚えておきましょう。

 

ライド

ライド 耳コピ

 

見た目がほぼシンバルなので戸惑いますが、こっちは思い切り叩くことは稀で、基本的には控えめに鳴らすのが常。

その何とも温かみのある音は特にジャズでよく好まれ、叩くというかもう殆ど撫でてる感じで鳴らされているのをよく目にします。

中央の山を「カップ」、周縁部を「ボウ」と呼ぶこと、叩いた時の音が違うことの2点を覚えておきましょう。音源の前半がボウ、後半がカップです。

ちなみにこの部位の区別はシンバルでも共通で、「シンバルのカップを叩く」ということもあります。しかし初心者のうちは聴き分けがムズいので、とりあえず知識だけ持っておいてください。

 

タム

タム 耳コピ

 

サビに入る時など、コレをダカドコ鳴らして勢いをつけるのを誰しも一度は耳にしたことがあるでしょう。

ドラムの太鼓類の中でも明確に音程感があるのが特徴で、高中低と3種類がセットされていることが多いです。

が、その個数はドラマーによって大きく異なり、1個だけのストロングスタイルから20個くらい置いて出られなくなりかけている人まで、多岐に渡ります。

 

その他、パーカッション系について

特に昨今の曲においては、ドラム以外にもリズムを構成する音色が多種多様に用いられるケースが増加の一途を辿っています。

音色の一例

  • シェイカー
  • ボンゴ
  • ウィンドチャイム

などは殊更よく見かけますが、それでも主要なモノのごく一部に過ぎません。もっと言えば「ループ素材」と呼ばれる、既に組んであるリズムを貼り付けて使うものが併用されていたりもして、そこまで完璧にコピーするのは現実的ではないでしょう。

なのでこと耳コピに限って言えば、あまり深追いしすぎないことも肝要です。細部にとらわれて97%から98%の完成度になっても、得られるものは僅かなのですから。

 

前提知識2:ドラムの奏法

出てくる音は分かったし、あとは根気よく聴き取るだけ! と太鼓の達人感覚で耳コピに入ると、遠からず「どうやって鳴らしてるのか分からない音がする」と面食らうことになるでしょう。

ドラムの各パーツは構造こそ単純なモノが多いですが、その鳴らし方(奏法)にかなりのバリエーションがあり、普通に鳴らした時と大きく印象が違うことも少なくないのです。

結果、正確な耳コピには奏法の知識が必要になる……ということで、いくつか主要なものを挙げておきます。とはいえコレもさわり程度なので、より深い知識は実践と並行して身につけていくようにしましょう。

 

ゴーストノート

 

「ギリ聴こえるかどうかくらいの音量で鳴らす音」を指します。音量と怨霊が掛かってるのは多分偶然です。

用途としては、通常のリズムにゴーストノートを散りばめる事で複雑なリズムを演出する為に使われます。↑の音源を聴くと、前半より後半の方が少しノれる感じがしないでしょうか。

聴こえてる通りに打ち込んでも何か違う気がする、という時はコレが鳴ってないか気を配ってみてください。特にスネアでよく使われます。

 

クローズドリムショット

 

スティックでスネアの縁を叩く奏法で、太鼓の達人で言う「カッ」に当たります。バラードなどの静かな場面でスネアの音は主張が強すぎるため、代用として使われることがあります。

ちなみにスティック同士をぶつけて鳴らすヤツは、「カウント」等と呼ばれる別物なので注意してください。

 

フィルイン

 

繰り返されるリズムの節目で、「ここからセクション変わりますよ」とアピるように音を詰め込んで勢いをつけるアレです。普通に曲を聴いていてもよく耳にしますね。

また切り替わりの時だけでなく、繰り返しのリズムの途中で変化をつける為に挟む場合もあり、そちらは単に「フィル」と呼ばれます。

 

シンバルチョーク

 

シンバルを鳴らした直後に手で掴み、余韻を殺す奏法です。

結果として「バシッ!」という打撃音だけが残るので、いわゆるキメを作る時に使われます

また「鳴らしてから掴むまでの時間」の長さによって印象が変わるため、打ち込みで再現する際はその辺りも意識してあげると良いでしょう。

 

耳コピの実際

まず帯域を削って聴きやすくする

一般的な曲の中ではドラム以外の楽器もバカスカ鳴っているので、何かしらの手段によって帯域を削り、目的の音だけを聴きやすくすると耳コピがスムーズに運びます。

普段僕が使っているのは、以下の3つ。

帯域編集ツール

まず一番お勧めなのがRX9というソフトの「Music Rebalance」機能で、↓の0:13~0:32のようにボーカルやドラムだけを曲中から抜き出すことができるという、耳コピの存在意義そのものを問い直すような特徴を持っているのです。

精度もかなり高く、個人的には完コピを目指すなら必須と感じています。

ちなみに「ボーカルだけを消す」みたいな逆の処理も可能なので、カラオケの無い曲でもアレンジの構造が見れたりと、DTM全般に渡って貢献してくれるのも嬉しいところ。

幅広い用途に使えるソフトだけあって通常4.5万前後と価格のハードルは高めですが、RXシリーズは頻繁にセールを行うので、そこを狙ってみてください。

 

いやでも4万は流石に……という場合は、deCodaが良いでしょう。

decoda

deCodaに出来ること

  • 指定した帯域のみを聴く、または削る機能
  • 音をピアノロールと帯域分布図で表示する機能
  • コード進行を検出する機能

などを備えた耳コピ総合支援ツールで、ドラムのみならず耳コピ作業全体が守備範囲なのが持ち味。耳コピ支援ツールを何も持っていないなら、最初の1つには良い選択肢です。

詳細は↓の記事に譲りますが、こっちは値段も6千円前後と比較的、手が出しやすい価格帯かと思います。

耳コピのハードルを破壊するツール「deCoda」【レビュー】

2021.12.12

 

そしてソシャゲで爆死して首が回らない、という場合はYorkTrailを使ってみてください。

これはフリーソフトながら、

  • 再生速度の変更
  • フィルターによる帯域指定
  • テンポ検出機能

など数々の耳コピ支援機能を備えている優れモノで、中でも左右に振られた音だけを聴くモード(L-R)がピアノやギターだけを上手いこと抜き出してくれるので、RX9で採れなかった音をコレに頼ることもあります。

このソフトの元になったWpak32を長らく愛用していたのですが、YorkTrailはその強化版として志を受け継いでいて大変感動したので、大変お勧めです。

 

あとはド定番として、DAW付属等のEQで帯域を削る手法があります。

ドラム 耳コピ EQ

単純にEQで聴きたい帯域を上げ、それ以外を削ることで目的の音を拾いやすくするというもので、大雑把ではあるものの、古来からの伝統的対処法です。

ただ初心者には目的の帯域を耳で特定するのが少し難しいかと(個人的に)思ったので、ある程度、自動で音を検出してくれる系の手段を先に紹介してあります。勿論やってみて出来そうなら、YorkTrailとEQで頑張るのも全然アリです。

 

耳で音を採る

お膳立てが済んだら、いよいよ耳コピに入りましょう。特に決まりはありませんが、僕は普段↓のような順序で採っています。

耳コピの順序例
  1. キック、スネア
  2. ハイハット、クラッシュ
  3. タム、その他

 

①キック、スネア

まずは最も聴き取りやすい、キックとスネアから。特にこの2つはこの後採る他の音のタイミングを図る基準にすることができるため、必然的に優先度が高くなります。

ただフィルインのスネアだけは一旦、スルーすることも多いです。フィルインは他のパーツとひとまとまりでリズムを構成するので、後でタムなどと纏めて採った方が感覚的に分かりやすい為です。

 

②ハイハット、クラッシュ

キックとスネアで作った土台に、装飾を乗せていくようなイメージで採っていきます。

クラッシュは分かりやすい部類なので苦労しないと思いますが、ハイハットは奏法や開き具合など音色の選択肢が広いため、注意深く時間をかけて採るようにしましょう。

 

③タム、その他

最後にタム周りとパーカッション系の音色、効果音(SE)などの細かい部分を詰めて仕上げです。

タムはフィルなどの局所的なタイミングで出てくることが多いため、例えば「2個目のスネアと3個目のスネアの間に高いタムが1個」みたいな感じで、先に打っておいたスネアやキックとの位置関係を意識しながら聴くと再現しやすいと思います。

パーカッション系の音色、効果音に関しては既存の素材が流用されているケースが多いですが、広いネットの海からそれを特定するのは現実的ではないので、SpliceLoopcloudで似たようなものを探すくらいが落とし所となるでしょう。

近い音で似た感じのグルーヴが得られる」ことを暫定目標とし、上でも書いた通り、あまり深追いしすぎないことが肝心です。

【4.0追記】デキる男のマストサービス「Loopcloud 2.0」【使い方レビュー】

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少しやりやすくなるコツ

最後に、ドラムの耳コピ全般に共通するコツ的なアレをいくつか書いておきます。

 

再生速度を落とす

特に初心者のうちは、流れる音が速すぎてネイティブの英語を聴いてるような置いてけぼり感をくらうのがお約束だったりします。

そういう時は単純に再生速度を落とすのが有効で、上で紹介したソフト類にも機能として搭載されていますし、大抵のプレイヤーで変更が可能です。

ただ、中には速度を下げると音程も一緒に下がってしまうソフトもあるので注意しましょう。元から低いキックがさらに下がったらただの振動になってしまうので、よく分からなければ上記ソフトのいずれかにしておくのが無難だと思います。

 

音はある程度の「まとまり」で捉える

音を採る時、「キックキックスネア、ハイハット入ってまたキック…」と、単音に注目するのはお勧めしません。思いっきり昔の僕ですが。

ドラムに限らず、耳コピでは音をある程度の長さのまとまり(=フレーズ)で捉える方が理解しやすくなります。特にフィルインなんかは「ドンタカドコドコ」みたいに”口ドラム”で再現してみると、不思議と打ち込みやすくなるのでお勧めです。

「まとまり」という事で言えば、ドラムは何小節か単位で繰り返しになっていることが多いので、1小節分採ったら一旦セクションの終わりまで聴いてみましょう。同じところはコピペで済まし、違う箇所だけ修正してあげるとスマートな自分を演出できます。

 

音色を近づける

音を採る作業は音感やアレンジ力を養いますが、そこから音色も原曲に近づけてみることで、ミックスや楽器そのものへの理解も併せて深まります。

 

パーツを揃える

スネアやキックなど、各パーツを原曲で使用しているモノに合わせるだけでも、パッと聴きの再現度がだいぶ上がります。

昨今は作曲者やミュージシャンが自ら、録音で使用した機材を雑誌やインタビューで話していることも多いので、ググるだけで割と見つかったりします。

上手いこと使用機材が特定できたなら、あとはドラム音源側で設定してあげるだけです。同じモノが収録されていなかったらその時は、Twitterで病んでおきましょう。

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ミックスで近づける

曲中のドラムはコンプやEQなどのエフェクターで加工された音なので、無加工のままでは印象が大きく違うことが多々あります。「正確に採れてるのに迫力が全然違う」と感じる時は大抵、この状況にあると思っていいでしょう。

解決策はもちろんエフェクターを適用することで、ドラムでは

  • コンプレッサーで迫力を出す
  • EQで高音域を強調したり、不要な低音を切る
  • リバーブを深く掛けて効果音的に加工する

みたいな処理が一般的です。

ただどう処理されているかは曲によって天地ほど差があるため、それに近づけるためには自分でエフェクターが操れる必要があります。その助けになればと書いた記事がウチにもあるので、手がかりとして見てみてください。

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かつて打楽器が友達だった俺たちへ

「フルコンボだドン!」

幼心に何かを成し遂げたような達成感を得たあの日、まさに″打楽器は友達″だったと言えるかもしれません。

音楽の素養など無くとも自然と身体でリズムを感じ、バケツを見れば日がな一日底を叩き続けた幼少期。それはきっとディスカバリーチャンネルじみた、遠い祖先を彷彿とさせる光景だったことでしょう。

しかしそれから時が経ち、今度は音楽としてドラムに向き合うとなぜ、耳コピに苦労するのか。初心者の頃は不思議に思ったものですが、それは決して素直な感覚を無くしてしまったのではなく、ただ忘れているだけなのだと思います。

それを思い出すお手伝いがいくらか、この記事で出来ていれば幸いです。次回は「ベースの耳コピについて」を予定しています。