レコーディングを自宅やそれに近い環境でやらざるを得ない宅録erにとって、常について回るのがノイズの問題。
エアコンを切り、PCを遠ざけ、全裸になってようやく録音を開始できるなんてことも決して大袈裟ではないでしょう。それでもうっすら選挙演説が入っていたりして、「人類根絶 やり方 おすすめ」でググる事もしばしば。殲滅対象に自分が含まれていることに気が付くはずもありません。
日常に潜む様々なノイズを防ぐための代表的な対処法としては、
などなどありますが、とにかく土地がない島国日本においては「ノイズが入らない環境を作る」という方向のアプローチは費用が嵩みがちです。そして本音を言えばその費用は良い機材の導入に回したい…というのが正直なところ。
となれば、残された道はもはや一つと考えます。入るノイズをどう防ぐか、ではなく「入ってしまったノイズをどう減らすか」というアプローチ。
つまりはノイズ除去のことなのですが、今回レビューする「ERA Noise Remover」というプラグインが総合的に最もお勧めである、というのが現時点での僕の結論です。
「逆に考えるんだ 『ノイズが入っちゃってもいいさ』と考えるんだ」
最終的にここまで僕の気を大きくしたノイズリダクションプラグイン。その実力の一端を、ご紹介したいと思います。
目次
ERA Noise Removerの概要
Noise Remover(accusonus社)は読んで字のごとく、録音時に混入した望まないノイズを低減、または完全に除去してくれるプラグインです。流石にまんま過ぎる気がしないでもない。
使い方はこれでもかとシンプルで、差して真ん中のノブを回していくだけ。
ただそれだけで、ノイズの部分だけが嘘みたいに消えていきます。
本当に「元々ノイズとか無かったよ」みたいな感じで下がっていくので、若干のホラーを感じます。
効果の視聴
実際に聴いてみましょう。今回はノイズマシマシのギターに適用します。
適用前
適用後
演奏の前後にガッツリ乗っていた電磁波ノイズが綺麗にキャンセルされているのが分かります。胸のすくような思いです。
今回は素材が歪みギターで、あまり強く掛け過ぎると実音も損なわれてしまうのでノイズが目立たなくなる辺りで止めています。が、やろうと思えば完全にノイズを切ってしまうことも可能です。
また素材にもよりますが、実音の劣化が極めて少ないのが凄いところ。結果を聴く限り、単純に音量でノイズと実音を判別しているだけではないような気がしますが、実際の仕組みは誰も知りません。
使い方と特徴的な機能
使い方は上記の通り、「PROCESSING」ノブをノイズが消えるまで上げていくだけ。
ここで親の仇とばかりに上げていってもいいですが、自然な仕上がりを目指すなら、オンオフボタンで適用前と後を切り替えながら「ノイズが消え、かつ実音の劣化も少ない」ポイントを探しましょう。
上手くノイズだけが消えてくれない…という場合は、画面下部の帯域指定ボタンを使います。
このボタンは「選択した帯域に対してノイズ処理を集中させる」という機能で、ノイズの傾向に合わせてより強く処理する帯域を指定することが可能です。
ボタンは左から
- 全帯域
- 高音域
- 低音域
- 中音域以外
- 中音域
という並び。
例えば「サー」といったノイズなら高音域を強く処理し、「ブーン」といったノイズなら低音域を強く処理する、と言った具合で使います。
よく分からなければとりあえず全部押してみて、適用前の音と一番差が少ないものを選んでおけばOK。難しく考えたら負けです。
そして時折、ノイズ除去によって全体の音量が下がることがあるため、最後にアウトプットで出力音量を調整してあげましょう。
個人的な所感とERA Noise Removerの強み
”声”の素材に絶大な効果を発揮する
Noise Removerは楽器にも使えるように設計されていますが、個人的に最も効果を発揮するのは「声」の素材だと思います。ボーカルやナレーションなんかですね。
今回はギターに適用し、それでも十分な効果がありましたが、声の素材に対して適用するとマジで上の公式動画そのままの感じで綺麗にノイズだけが下がります。オンオフしてもノイズの有無以外の違いが何も分かりませんでした。
特に趣味や同人サークルでナレーションを収録する、なんて人にはかなり重宝するのではないでしょうか。マイクそのものの音質を除けば、雑音が無いだけでだいぶ素人っぽさが減らせるはずです。
もちろんDTMにおいてもボーカルの下処理に使ってあげれば音質の底上げになりますし、後段のEQやリバーブも掛けやすくなります。今までノイズを目立たなくするためだけにカットされてきた高域たちも浮かばれることでしょう。
注意点もある
Noise Removerは確かに変化の少ないプラグインですが、とはいえ強く掛け過ぎれば音質の劣化は生じます。上でも書いた通り、ノイズと実音のバランスが取れるポイントを見つける事が重要です。
身も蓋もないですが、元々ノイズのない環境で録音するのが一番いいのは間違いありません。その環境が用意出来ないからこそ、次点の手段としてNoise Removerが活きてくるわけです。
また掛け過ぎで言えば、ギターみたいな「倍音がウリの音」は美味しいところも削れていきやすいので、使用する際はより一層の注意を要します。
ボーカルなどの声素材と比べて音質が変化するタイミングが早いため、”完全にノイズを切る”というやり方はお勧めしません。曲に混ぜたら分からない、くらいで留めておいた方が賢明です。
まとめと他ERAシリーズのレビュー
そもそも電磁波ノイズの塊であるPCで録音しようとすること自体が矛盾しているような気もする、DTM。誰もがうっすら感じていたこの違和感も、技術の進歩によって克服されつつあります。
もちろん「Noise Removerがあればスタジオに行かなくてもノイズの少ない録音ができる」とまでは言いませんが、少なくともノイズに強いマイクケーブルや電源を導入するよりは安く、効果も高いと思います。あと数年早く出てくれていれば僕の預金残高もまた違っていた事でしょう。
ノイズ対策は作曲より前の段階にあるものです。経験として知っておくのも良いですが、必要な分の対策は簡単に済ませ、その時間は創作に費やすことをお勧めします。
その他ERAプラグインのレビュー▼